風俗のお仕事◆『風俗嬢菜摘ひかるの性的冒険』菜摘 ひかる

いつも読んでいる「本の雑誌」に、「職業。素人ヌード雑誌編集長。」という本が紹介されていた。だいぶ前だけど。
気になっていて、Amazonで探してみた。書店で買うにはちょっと恥ずかしいが、Amazonなら買える。いや、でも購入履歴が残る分だけ、逆に恥ずかしいかも(他人が見ることはないけど、万が一ということもある)。類似のおすすめ書籍が紹介されちゃうしね…。便利だけど、ありがた迷惑なこともあるのだった。

どうせなら、この際、気になっているものをまとめ買いしようと、「風俗嬢菜摘ひかるの性的冒険」「セックスエリート」も同時購入。死なばもろとも。(意味が違う?)

「〜素人ヌード〜」の著者は、素人専門のヌード雑誌の編集長。街で声をかけまくり、ヌードを撮らせてもらうというのは無謀とも思えるのだが、これが意外と応じてくれる女性がいるというから驚き。女性向けエロマンガ雑誌(?)、いわゆるレディースコミック(レディコミ、そのエロさ加減は雑誌によってピンキリ)に掲載した広告経由での応募も多いらしい。こちらのほうがまだわかる。

雑誌のタイトルにわざわざ「素人」と入っているくらいだから、もちろん「プロ」というのもいる。この雑誌の場合は要するに、素人モデルの、プロっぽくないところが受けたのだそうだ。ヌードに素人もプロもあるのかと思ったのだが、これがあるらしい…。単なるヌードではなく、性欲を刺激するヌードであるから、やはり男性としてはいろんなツボがあるのだろう。ま、詳細は読んでくだされ。こんな企画を考える男も男だが、それに乗る女も女。世の中にはいろんな人がいるもんである。

次に読んだのが「菜摘ひかるの性的冒険」。この本はけっこう話題になっていたと思うのだけど、この著者はたしか若くして亡くなっている。当時、どんな人で、どんな亡くなり方をしたのだろうと思って、ネットで調べたのだが、あまり情報がなくてがっかりした。一個人の情報だから、詳しく載っているほうが怖いといえば怖いけど。

読んでみたら、文章がとてもしっかりしていて読みやすい。内容は風俗嬢のエッセイなのだけど、そのまま、OLのエッセイとしても読めそう。というのも、仕事の内容は男性に性的サービスをすることだけど、仕事に対する姿勢は共感できる部分が多々あるのだ。風俗というと、借金の形に仕方なくやっているとか、そういうイメージがあるけれど、著者はとにかくこの仕事が好きなんだと言う。要するにセックスが好き。そしてたぶん、それによって男性が喜んでくれると、自分が必要とされていると感じるのだろう。仕事でのそういう充実感って、どんな職種でもある。それがたまたま風俗だったのだろう。

なーんて簡単に言ってしまっていいのだろうか、とも思うが、これを読んでいると、「そんなに好きならずっと続ければいいよ」って応援したくなってしまうから不思議。病気だとか、世間体だとかリスクも多いけれどね。

大抵、こういう体験本って、なにも風俗じゃなくたっていいじゃない、まともに働けよ…って思うことが多いのだけど、この人の場合は違う。趣味と実益を兼ねているのだ。

こういうエッセイって一過性な気がしていたのだけど、著者の死後も文庫でずっと売れ続けているという訳が分かった気がした。他の本も読んでみたくなった。

風俗って、一言で言うけれど、ほんと、いろんな職種があるのだ。知らなかった。ヘルス、ソープ、ホテトル、アダルトビデオ、ストリップ…。仕事の内容が事細かに説明されていて、「へぇー」の連続。いやぁ、勉強になった。私には無理だわ。肉体労働だし。もうこの年ではソープに売り飛ばされるなんてこともないだろうけど、借金作らないように気をつけよう。

最後に、「セックスエリート」。もと風俗嬢の著者が、各地のナンバーワン風俗嬢を取材したもの。風俗嬢たちのインタビューは興味深いものがあったのだけど、著者の私生活までからめた語り口にはいささか辟易。

「〜性的冒険」と正反対で、著者にまったく共感できず。付き合っているのは暴力的なわがまま男だし、考え方が後ろ向きすぎて読んでいて気分が悪くなってしまった。この人は好きでこの仕事をしているんだろうか…。これでは、風俗嬢でも文筆業でもうまくいかないのではないだろうか。職種の差はあれ、仕事に対する意識の持ちようというのは同じな気がする。

だから、風俗でも成功している女性というのは、おそらく他のサービス業でもある程度は成功するのではないかと思う。

風俗から喫茶店業に転職するのは、もしかしたら花屋さんから本屋さんに転職するようなものかもしれない。物を売る仕事の中でも、花が好きな人は花屋さんになる。サービス業の中でも、性的サービスが好きな人は風俗に行くのかも。ま、それ以上に報酬が桁違いってのが一番大きいのだけどね。人気があれば月に何百万も稼げるらしい。若いうちにせっせと億単位を稼いで、あとは悠々自適に暮らすっていうのもありかもしれない。

風俗嬢というと、お金のために仕方なく…というイメージが強くて、ちょっと悲哀を込めたまなざしを向けたくなってしまうが、雑誌の素人ヌードに応募してくる人がいるように、風俗業が好きで好きで堪らない、という人もけっこういるのだろう。

売春婦というのは世界最古の職業だと聞いたことがある。性的サービス業っていうのは、人間の本質的な部分をかいま見ることができる、非常にオーソドックスな職業なのかもしれない。さげすまれ、下に見られることも多いけれど、世の中的には必要な職業なのだとちょっと思ったのだった。

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