お客様目線の接客◆『「満足」を「感動」に変えるサービス・マインド』此花 あかり

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「満足」を「感動」に変えるサービス・マインド (CSホスピタリティコミック)

  • 此花 あかり(著) 此花 あかり(イラスト)、柿原 まゆみ(監修)、林田 正光(監修)
  • PHP研究所
  • ¥ 1,365 [単行本(ソフトカバー)] 2010-08-28
  • ISBN:9784569779270 / ASIN:4569779271

Twitterでお知り合いになった此花あかり先生の本。ご本人からお聞きしたいろんな裏話も面白かったのだけど、この本の内容が素直にとてもよかった。ビジネス書なんだけど、ストーリーマンガとして面白い。ぜひ、第二弾も作って欲しいなぁ。

監修は元ザ・リッツ・カールトン大阪営業統括支配人の林田正光さん。ホテル時代に培ったホスピタリティにもとづく接客術などに関する著作が多い方だそう。

私はなぜかビジネス書が好きで、そういう職業ではない割にはよく読んでいるほうだと思う。お客様へのサービスの仕方については、この本の中のそれぞれのエピソードで「前にどこかで読んだな…」と思うようなことが多かったのだけど、結局、お客様の立場に立ったサービスをしようと思うと、そうなるよね、と。

それよりも興味深かったのは、社内での「クレド作り」。クレド(credo)って馴染みがない言葉なのだけど、「信条とも哲学とも訳されるラテン語」で「従業員一人ひとりが同じ価値観で目標を持って業務を遂行していくための、行動指針」だそう。要するに、職場全体での共通認識を持つための具体的な言葉(目標)、ってことのよう。

ひとりで頑張っても職場の雰囲気って変わらなくて、みんなでやっていかなければいけないのだけど、なかなかうまくいかない。まずは社内での共通認識を持つことで、会社(お店)全体の雰囲気が変わってゆくのではないかと思う。そのための、意識改革、それぞれの役割、協力体制、意思疎通(コミュニケーション)などがスムーズにゆくようにするにはどうしたらいいのか、主人公たちが悩みながら、壁にぶつかりながら、試行錯誤してゆく過程が共感を持てたし、面白かった。

思いだしたのは、某大企業の話。入社試験では、その会社の創業者の本を読んだかどうか、その感想のレポートかなにかを提出したりするんだったかな、とにかく、その創業者の理念をきちんと理解しているか、共感しているかという点が重要らしい、と聞いたことがある。そのことを話してくれた方は批判的で、そんなこと能力に関係がないじゃない、という感じだったのだけど、私はなるほど、と思ったのだった。

いくら能力があっても、会社の理念に沿った行動をとってくれる人間でなければ、会社の利益は上がらない。それまでの会社の方針と違う行動を取られてしまったら、取引先やお客さんの信頼を裏切ってしまう可能性だってある。おそらく、会社としては多少能力が劣っても、会社の理念に深く共感している人間のほうが将来的に会社のためになる働きをしてくれる、という思惑だろう。で、どれくらい会社の理念を理解しているかということを計るのに、創業者の本を読んでいるかどうか(それに共感しているかどうか)、という基準はしごく妥当に思える。

受験する方は、たくさんの会社を受けるのだろうからいちいち本など読んでいられないのかもしれないけれど、採用する会社の側としては少しでも会社の利益になる人材が欲しいわけだから、本を読んでいない人よりは読んでいる人を取りたいに決まっているのだ。そうすれば、入社後の研修もスムーズだろう。

会社の理念、社風のようなものを理解して入ってきた社員なら、思っていたのと違った、と辞める確率も低くなる。会社全体の目標もわかっているわけだから、自分のやっている仕事が大きな目で見てどういうことをめざしているのか、社会にどういう貢献をしているのか、ということがわかる。わかれば、小さな仕事でも大きな志でこなすことがきそうな気がする。

そういう会社はきっと、いい会社だろう、と勝手に想像したのだった。(違うかもしれないけど…)

職場での意識の共有っていうのは大事。いろんな考えの人がいていいけれど、目標とする到達点が見えているのといないのとでは全然違う。それぞれ違った方法でいいけれど、最終的に目指すゴールが決まっていれば、全体のまとまりができるのではないかな。

お客さんへのサービスという点では、買わないお客様にも親切に、という点に共感。私が昔働いていた書店はチェーン店だったので、あまり郷土に関する本は置いてなかった。なので、そういう本を探しているお客様には普通に、「あのお店にはあると思いますよ」と地元密着型の、近くの書店を紹介していた。…が、そうでない店もあるらしい、と最近知った。ライバル店にお客を紹介するなんて、ということらしいのだけど、私にしてみたらそっちのがびっくり。普通のお客さんの利益を考えたら紹介するでしょう、と思っていたんだけど。

他店を紹介しても、そのお客さんは店員の対応を覚えていて、そのサービスがよいと思えばまた戻って来る。お客さんの側からしたら当たり前で、私がお客さんだったらしてもらいたい、と思うことをしてあげる。そうすれば、あの店なら信頼できる、とまた来てくれる。友人にも家族にも、その店を勧めてくれるかもしれない。

たとえば、お子さんとか、今の時点でお客さんではない方にも親切に対応すれば、きっとそれはお店に返ってくる。劇団四季は無料で子どものための観劇会などを開いているけれど、あれは社会貢献という意味合いと同時に、未来のお客様候補への先行投資だと思う。子どもの頃に見たミュージカルを大人になって家族で見に来てくれれば、それなりに元が取れるだろう(その前に両親を連れて再び観に来てくれるかもしれないし)。顧客の裾野を広げるという意味では企業利益になる活動だと思う。

NHK大河ドラマ「龍馬伝」の中で、岩崎弥太郎が材木を売ろうとするのだけど、いくら安くしても売れなかったのに、材木を買ってくれれば家の補修をタダで請け負うと言ったらたちまち売れてしまった、というエピソードがあった。お客がモノを買うときに、オマケで欲しいものは、お金ではなく、心なのだと。

そういえば、この本のタイトル「サービス・マインド」の「マインド」も「精神」「心」という意味。やはり心が大切なのだな。

■『「満足」を「感動」に変えるサービス・マインド』公式サイト
「ホスピタリティの広場」(立ち読みコーナーあり)
http://servicemind.typepad.jp/

■此花あかりWEB
http://konohana.typepad.jp/