母と娘の強烈個性◆『シズコさん』佐野 洋子

母と娘の確執を書いたエッセイということで、もうちょっと共感するところがたくさんあるかと思ったのだけども、意外にもそうでもなかった。佐野洋子さんが主観的な視点から自身と母について綴ってあり、両者の強烈な個性に、とても、感情移入するという余裕はなかった。

佐野さんの母が私の母で、佐野さん自身が私のように思えることもあれば、その逆もあり、結局はどちらも似たもの親子なのである。

自分自身の嫌なところが、母の嫌なところとそっくりだったりすると落ち込むのだけど、佐野さん自身も、母の中に自分を見て、自分の中に母を見ているのではないかと思った。

母が嫌いだと言いつつ、母から習った編み物や料理の話が何度も出てくる。母に反発しつつも、母から習った料理という武器で姑と戦ったりしている。

母を嫌いつつも高額な養護施設に母を預けて自分がその支払いをしている。それは、母に対する罪滅ぼしだと言っているけれど、立派な親孝行だと思う。素直に好きだと言えないところは、佐野さんが嫌いな母にそっくりなんじゃないだろうか。

佐野さんは、母という存在から逃れられないことを知っている。母を捨てられない。自身も母だからかもしれない。

読んでいて、佐野洋子という人の個性におののいた。佐野さんに娘がいたら、きっと、もっとすごい確執があったんじゃなかろうか。こんな母、イヤだ。佐野さんの絵本は大好きなのだけど。