思考のスイッチを変える◆『母の呪縛から解放される方法』Dr.タツコ・マーティン

問題のある母のパターンが10種類に分類されて具体的な例とともに紹介されている。我が家の母の場合はどれかひとつに当てはまるということはないのだけど、一番近いのは「未熟マザー」のような気がする。ただし、本に掲載されている例ほどひどくはない。

この手の本をいくつか読んでみると、解決法はどれも似ているのだけど、それぞれの著者によって問題の捉え方が微妙に違っていることに気がつく。著者の性別や立ち位置や経験などによるのだと思う。同じような内容でも、いくつか読み比べてみると自分のケースにあてはまる事例や、これなら実践できそうという解決方法があると思うので、悩んでいる人は一冊だけで解決しようとせずに何冊か読んでみるといいと思う。カウンセラーに相談するにしても、どういうタイプのカウンセリングを受ければいいか参考にもなると思う。

この本の場合は巻末近くで、よいカウンセラーの条件が載っているので、参考になる。また、よい母親の条件というのも載っていて、母とのトラウマを抱えた娘が母になった場合にどのように子育てをしていけばいいのかということの参考になる。私の場合は、その条件を読みながら、うちの母に欠けているところをいくつか発見して、なるほどと思ったのだった。

父親と仲のよい実の娘に対して母親が嫉妬心を抱くとか、家事がきちんとできないといいお嫁さんになれないと言いつつ、しっかり勉強してひとりでも生きていけるようになりなさい、と矛盾しているようなことを言うとか、娘に成功して欲しいと思いつつも自分よりも成功した人生を送ることを(無意識に)許さないとか、当事者には見えないことも、客観的に考えると「あるある」というようなことだったりする。

当事者が、その原因(トラウマ)を認識することで、問題が解決していく可能性が広がる。自分と母親は別の人間で、別の人生を送るのだ、と強い意志を持って宣言して、行動に移すことで母の呪縛から解放される。

自分自身も母親の呪縛を断ち切るためにいろいろ工夫をしているけれど、ときどき罪悪感が顔を出したり、これでいいんだろうかと迷ったりすることもある。しかしこの本は、母に遠慮せず幸せになりましょう、と背中を押してくれる。

母と娘の関係に限らず、ポジティブな思考法にも触れられていて、「病気にならない」と思うと「病気」に焦点があたってしまいかえって病気を呼び寄せてしまうから、病気にならないためには「健康になる」と思ったほうがいい、というのには納得。

とにかく、当事者は出口がないと思いがちだけども、自分の思考のスイッチを変えることで、母の言動に対する自分の行動を変え、そこから母の行動や母娘の関係も変えていくことができる。そのちょっとしたコツを掴むだけでも悩みが解決されることがあるかもしれない。