日本はこれでいい◆『日本辺境論』内田 樹

途中、ナニ言ってるのかよくわからない部分もあったものの、日本人がどうして日本人っぽいのかという理由として、なるほどと思う部分も多かった。実際に辺境であるかどうかではなく、辺境思想みたいなものがあって、それが日本人の思考回路に深く根ざしている、ということらしい。

実感としてよくわかったのは、最後のほうに言及されていた、日本語の特殊性。つまり、表音文字(かな)と表意文字(漢字)が混在しているということ。このような言語は世界的にも珍しいと。これが日本語を勉強する人にとって難しいところなのかもしれないけれど、逆に考えると、日本語話者が表音文字しかない言語や表意文字しかない言語を勉強しようとするときに、日本語とは勝手が違って、日本語では表現できるものが他の言語で表現できないという壁にぶつかるのではないかと思ったり。

やたらとボディランゲージの多い国の人たちは、言葉で表せない分、身体で表現しているのかもしれない。日本語はその場の空気感のようなものまで、言語で表現してしまう。だからあまり大きな身振り手振りは必要ないのかも。

この日本語の特殊性が、絵と文字を同時に表記するマンガが日本で発展した理由でもあるという説明には、深く納得。

また、一人称を「ぼく」にするか「私」にするか、文末を「です・ます調」にするかどうかで文章の書き進め方が変わってくるというのも、とてもよくわかる。同時に、これが日本語を解さない人には理解しにくいであろうことも想像できる。

そういう、いろんな意味で、日本という国は他の国とは違うところがあって、それが日本を日本たらしめている、という、そんな内容だった。…読み終わってみれば「だからなに」と思わないでもないけれど(自分たちにとって当たり前のことが書いてあるだけだから)、これが日本の良さなのだから、このままでいいのだ、ということを確認できた気もする。

海外のほうが優れたものがあったとしても、日本は日本なりにそれを補うような辺境思想で乗り切ってきたわけで、それはそれでいいんじゃない? という気持ちになったのだった。