チェーホフを楽しむために (新潮文庫)
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シェイクスピアよりもチェーホフのほうが好き、なのだけど、ではチェーホフの戯曲のあらすじは? と聞かれると…すっかり忘れている。
あらすじというよりも作品全体の雰囲気、そのストーリーを包み込む空気のようなものが好きなのだ。
そのチェーホフを、阿刀田高が読むとどうなるのか、興味があった。
もともと、阿刀田氏の「○○を楽しむために」とか「○○を知っていますか」というシリーズが好きだったので、阿刀田×チェーホフを楽しみたいというのもひとつ。
チェーホフは、有名な戯曲しか読んでいなくて、そのほかの小説作品ってどうよって思っていたのだけど、この本を読んでみたらやっぱり小説より戯曲なのだと思った。読んだことのない小説を読むよりは、過去に読んだ戯曲をもう一度読み返したくなったのだった。
シェイクスピアは、作品のストーリーや解説を読めばなんとなくわかった気になる。しかしチェーホフは、作品そのものを読んでみないと、あの微妙な空気はわからない。阿刀田氏をもってしても、チェーホフ作品の絶妙なニュアンスまでは伝わらず、結局、読んでみるのが一番てっとりばやいんじゃない? と思った。
しかし、短編小説家という同業者としての視点からのチェーホフ論というのはなかなか面白くて、チェーホフというフィルターを通して、阿刀田高を楽しめる一冊である。