ゲゲゲの女房
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漫画家、水木しげるさんの奥様の自伝。しかし、長年夫唱婦随で連れ添ったご夫婦だけに、奥様の自伝でありながら、水木しげるさんの評伝でもあるような、そんな内容だった。
ふるさとの島根県安来や境港。お見合いから5日での結婚。上京。貧乏暮らし。「ゲゲゲの鬼太郎」のアニメ化。決してサクセスストーリーではなく、いつでも飄々としている水木さんと黙って夫についてゆく妻の愛情物語。とても素敵なご夫婦。
恋愛とか、女性の自立だとか、お金があったほうが幸せだとか、昨今の幸福論で投げかけられているいろいろな課題へのひとつの答えのような気がした。本人の性格にもよるけれど、こういう幸せってあってもいい。昔はこういうご夫婦が幸福モデルだったのかもしれないけれど、今はそういうのは時代遅れ、というような風潮で、なんだか逆に生き辛くなっている人もいるんじゃないかなぁ。
夫を尊敬して夫の仕事や信念を信じて全力でバックアップする。そういう生き方もあっていい。そして周りには家族や親戚がいて、みんなで助け合って生きていく。それって「幸せ」だと思う。
奥様から見た水木しげる氏の性格や私生活も興味深い。周りの人から慕われる人柄で、おおらかで懐が深い。生きることにはどん欲で、自分が好きなことには信念を持って懸命に取り組む。水木しげるという人のいろいろな側面を見ることによって、自然とその魅力に引き込まれてしまう。
辛いこともあったと思うのだけど、こういうご夫婦になりたいし、こういう生き方もいいなぁと思ったのだった。