読みながらずっと、椰月美智子作品を何かに例えたら何だろうって考えていた。なにかこう、特別じゃなくて日常的なもの。日本茶とか。
江國香織作品はコーヒーや紅茶。ちょっと気取った場面でお客さまに出したいような。小川洋子作品は羊羹かな。好きな人は好きだけど、苦手な人もいるかも。そしてお客さまに出すのもいいけど、ひとりでこっそり食べるのもいい。日本茶は場所を選ばすに誰にでも出せて、好きとか嫌いとかあんまりない。椰月作品はそんな感じ。まだ二冊しか読んでないけども。
「るり姉」は、三人姉妹の叔母。シングルマザーの母の妹。るり姉以外の登場人物たちによって語られるるり姉。それぞれの人物がみんな魅力的で、好きになる。もちろんるり姉も。
ささやかな日常で、特別なことはなくて、どこにでもいそうな家族で、どこにでもありそうな家庭内の問題もあって、るり姉も離婚して再婚していて、大病もして、大げさに書こうと思えばもっと大げさに書けるだろうし、悲劇的な物語にもなるだろうし、逆に淡々と書くことだってできるような物語なのだけども、椰月さんにかかると絶妙のさじ加減でなんとも軽やかな物語になってしまうから不思議。
いろいろあるけど、とりあえず前向きに元気に生きて行こう、って思えるところが椰月作品の魅力なのかもしれないなぁ。途中でなんとなく結末が想像できてしまったのだけど、それでもみんなが楽しそうだからいっかと思える読後感なのだった。