著者は中国出身で、中医学を勉強した中医師。鍼灸の普及のために来日し、来日12年目に帰化して日本人となった。
東洋医学が軽視されがちな日本。中医学が日常生活に浸透している中国から来た著者から見れば不思議なことも多かったらしい。中国と日本の医療事情の違いから、中医学とはどういうものか、どんな病に鍼灸が効くのかなど、わかりやすく説明されていて楽しく読み進められる。
私がお世話になっている鍼灸師の先生は婦人科系の患者さんを多く診ていて、不妊症の女性が妊娠したとか、逆子が治ったとか聞いて、最初は驚いた。この本の中でも不妊症が逆子について書かれている。逆子は93%の治癒率だそうだ。婦人科の病気と鍼灸は相性がいいらしい。
中医学では病名で診断するのではなく、総合的に患者さんの身体を診てその患者さんに合った治療をする。そのため、西洋医学で難病とされた患者さんでも治療できる。そして、実際、そういう患者さんの治療をして快復したという例が何件も挙げられている。これはおそらく、大げさではないと思う。
ただし、西洋医学の治療を受けたたり、他の鍼灸師の治療を受けても症状が改善されなかった患者さんの症状が著者の鍼灸治療によって改善したと書かれている。つまり、鍼灸ならなんでもいいというわけではなく、やはり治療者の腕によって、改善する場合とそうでない場合があるのだと思う。
西洋医学では治療が困難とされた病気が、鍼灸で必ず治るかどうかというと、どうだかわからないけれど、少なくとも治った例はいくつもあるのだ。治らないまでも、余命が伸びたり、生活の質が向上したりしている。
難病と診断され、病気と戦い、薬漬けになって苦しみ、弱った身体で死んだ方がマシだと思いながら3年間生きるのよりも、鍼灸によって痛みや苦しみをとりのぞき、生活を楽しみ、好きなことをしながら1年間生きるほうがいいんじゃないかと思う。そして、たぶん、鍼灸治療が合っていれば、余命だって伸びるのではないかと思う。
アロマテラピーの効果を実感したときにも思ったけれど、日本の病院はもっとこういうものを医療に取り入れて欲しい。どういう治療法を選ぶかは患者さん次第だけれど、治療法の選択肢の中に、アロマテラピーとか鍼灸とかがあってもいいと思う。