なんともいえない読後感の悪さ。身体に重い障害を持つ作者が書いた当事者文学、という背景を知って読むのと知らずに読むのとでは印象が違いそう。
第169回芥川賞受賞作。賞を取ったことで注目され、話題になったので読んでみた。
物語は入れ子構造になっていて、それほど目新しい展開があるわけでもなく、なんとなく、結末も、ああやっぱり、という感じではあった。とはいえ、健常者には見えない世界を描いた問題作という意味では記憶に残る一作だろう。
性的な描写の過激さに引きつつも、障害者と性について、あまり表に出てこない「シモ」の話を全面に出して、その背景にあるもっと一般的な、たとえば読書についての部分(本の重さが読書の障害になる)がクローズアップされたように、健常者と障害者の間にある「障害」について目を向けさせるのが狙いなのかと思いながら読んだ。
これはノンフィクションでも私小説でもなく、フィクションの小説。なので、著者の属性(障害者かどうかとか、性別とか年齢とか)に関係なく、読み出したらストーリーに没入してしまう、というのが理想なのだけども、どうしても、「当事者が書いている」ということを意識しながら読んでしまった。単純にそういう情報が先にあったからなのか、ストーリーに入り込めなかったからなのかよくわからない。両方かも。
障害者イコール弱者、守られるべき清い存在、というイメージをぶち壊し、心の中にあるドロドロしたヘドロのような部分をさらけ出す。読んでいると、だれでもが持つ鬱屈した感情が湧き出る。そこに救いはない。だから、きっと、読後感が悪いのだ。
(電子書籍で読了)