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ながい旅 (角川文庫)
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「明日への遺言」というタイトルで映画化され話題になっていたので、原作を読んでみた。大岡昇平は「野火」や「俘虜記」を昔読んだことがあって、割と好きな作家だったので、気軽に読み始めたのだけど、小説ではなくてノンフィクション調だったので、ちょっと読みにくかった。まず、軍隊の役職・階級がわからない。一応、説明はされているのだけど、馴染みがないのでチンプンカンプンだった。
主な内容は裁判の経過。岡田資(たすく)氏は、米兵捕虜の処刑容疑でB級戦犯に問われたのだが、責任を一身に負って部下を守り抜きひとりで刑をかぶった…ということらしい。同様の裁判で死刑判決が出た場合も、執行されることは少なかったようなのだけど、岡田氏は昭和24年に刑死している。裁判中もそうだが、獄中での態度も立派で、日米双方の関係者から尊敬を集めていたようだ。
岡田氏が立派な人物らしいということは分かったけれど、一方で、戦場で指揮を執った作戦については批判もあるようで、どういう点を判断基準にすればいいのかよくわからなかった。自分のしたことについて、潔く責任をかぶったということなのかというと、そういう訳でもないようで、客観的(かどうかは分からないけど)な資料としては読む価値があるかもしれないけれど、小説形式にしたほうが理解しやすそう。小説だとフィクション性が高まるのだろうけど、逆にそのほうが物事の真実が伝わったりするものなのだ。
そういう意味では映画を先に見た方が分かりやすかったかも。
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明日への遺言 特別版 [DVD]
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