乙女の密告
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この本で一番気に入っているのは実は装丁だったりする。ハードカバー本の楽しみは装丁なり。
芥川賞受賞で、雑誌「文藝春秋」に全文掲載されたのだけど、単行本のほうを買った。
本文のレイアウトも、余白を多くとってあって贅沢。こういうのが紙の本のいいところ。電子書籍でもページデザインは再現できるけど、余白部分の紙の質感は液晶画面からは伝わらないのだ。貧乏性なので、白い部分の多い本は割高な気はしてしまうのだけども、内容にあっていて絶妙なレイアウトだと恐れ入りました、という気分。
肝心の内容について。全体的には青春小説のような印象。ああ、若いな、と。でもやたらとキラキラしていないし、むしろ渋い。だから読みやすかったし拒否反応もなかった。乙女チックでロリロリしているわけでもない。描写はリアルなんだけど、どこか嘘っぽい。
登場人物たちの外見の描写がほとんどないからかもしれない。「乙女」な物語といえば、美少女と平凡な女の子の対比があるものだけど(大抵平凡な主人公が美形の先輩に憧れたりする)、この小説はタイトルに堂々と「乙女」を掲げているにもかかわらず、「美少女」は出てこない。そこが新鮮なのかも。ひたすら内面に関する問い。だからすんなり読めてしまったのかもしれない。逆に「心の乙女」に嫌悪感がある人はちょっと引いてしまうのかもなぁ。