刺繍する少女 (角川文庫)
|
小川洋子さんの短編集。いつもながら、美しくて残酷な物語の数々に脱帽。
書かれている内容はグロいのに、文章はきれいで、そのアンバランスさに引き込まれてしまうのだった。写経のように書き写したくなる。
透き通った琥珀に閉じ込められた太古の昔の昆虫たちの遺骸。美しいのだけど、そこには死がある。そんな感覚と似ている。
まったくのファンタジーのような作品もあれば、現実からそう遠くないような作品もあるのだけど、ファンタジーのほうが現実味を帯びていて、リアルな作品のほうが異世界の話のように感じられたり。そういうところが、小川作品の魅力なのだろうな。
短編集は、ひとつひとつの作品がどれも色の違う宝石のようで、それらを繋げたネックレスのように、一冊読み終わるとなんだか贅沢な気分になるのだった。