Facebook 世界を征するソーシャルプラットフォーム (ソフトバンク新書)
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TwitterでやりとりしていたTBSのぶうぶ(@tbs_channel)さんが書いた本。2007年からのアメリカ留学中に接した、アメリカの学生たちのフェイスブック生活。そこから著者の実体験を踏まえてフェイスブックとはいったいなんぞや、ということを分かりやすく解説してくれている。
私たち日本に暮らす大多数の日本人にとってはまだまだフェイスブックは未知の世界。しかし、ご自身も学ぶ大学の学生たち(つまり同級生たち)とリアルにフェイスブック生活を送った方のレポートは興味深い。すでにテレビマンとして数々の番組に関わっていた方が、学生としてアメリカの大学生活を送ったというそれだけでも十分興味津々だけど、行ってみたら猫も杓子もフェイスブックを使っていて衝撃を受けたというのだから、思わず身を乗り出して話を聞いてみたくなる。
そして、この本は見事にその期待に応えてくれるのだ。フェイスブックの成り立ちからブームとなった理由、フェイスブックによってどう生活が変わるのか、そしてフェイスブックが引き起こした悲劇まで、まるでテレビのフェイスブック二時間特番を見ているかのようにめくるめく解説が続くのである。思わず、VTRを見ながら質問したり「ほうほう」とうなずくコメンテーターになった気分だ。
まぁ、私のようなおばさんにはフェイスブックにうっかり独身と書いてしまったがために嫉妬に狂った夫に殺されてしまった妻とか、ふられた腹いせに元カノのプロフィールページに彼女のヌード写真を載せてしまったバカ男とか、そんな話が一番面白かったんだけど。いや、人の不幸を面白がってはいけない。あまりにも個人情報をあからさまにしてしまうとそういう悲劇も起こり得る、という警告なのである。
著者の山脇さんは普段からネットとテレビの融合ということについて興味深い発言をされていて、実際に他のテレビ局に先駆けてTwitterやフェイスブックを導入して視聴者の生の反応に手応えを感じているらしい。私だってTwitterがなければテレビ局の「中の人」と個人的な会話をするなんてなかったと思う。以前は考えられなかったことだ。しかも、フォロワーが2万人以上もいるTBSの公式アカウント(@tbs_channel)に私が作ったアイコンが使われているなんていまでも不思議な感じである。
そんな方が、「フェイスブックはすげえ」って言うんだから、きっとすごいんだろう。何がすごいのかは、正直まだよくわからないけど、きっとすごいんだと思う。
で、そうやって、よく知っている人が「おすすめ」するものを「よくわからないけどあの人が言うんだからきっといいものだろう」と思う人間の心理に、フェイスブックは上手くフィットするらしい。つまり、友人の「これいいよ」って書き込みを見て、その商品を買う、「こういうの欲しいんだけど」っていう問いに友人たちが「あなたにはこんな商品が似合うんじゃない?」って書き込む。そういう、より個人的なやりとりができる場というのがフェイスブック、らしいのである。
そしてこの本の最後では、ちゃんとソーシャルメディアとテレビの未来についても考察されていて、テレビマンらしくまとめられているのであった。
フェイスブックのビジネス利用や、フェイスブックで一旗揚げよう、友達を1000人作ろう!なんて本が多い中、社会の中でSNSやTwitterなどのソーシャルメディアがどのような役割を担うのか、それによって世の中はどういう風に変わっていくのか、ということについて客観的な分析を交えて書かれた貴重な一冊。Twitterとかフェイスブックとか、どんどん新しいものが出てきて、どうなってるのかさっぱりわからん、という方にもおすすめ。