食料自給率100%を目ざさない国に未来はない (集英社新書)
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この本を読むと、日本の食糧自給率の低さの問題が思っていたよりもずっとずっと深刻だということがよくわかる。少子化、医療崩壊、貧困…さまざまな社会問題がマスコミなどで大きく取り上げられているけれど、食糧自給率の問題ももっと認知されるべきものなのではないかと思った。
本の内容がすべて正しいかどうかはわからないけれど、ともかく、議論して真剣に取り組むべき問題であるとはと思う。
日本国民の食料が外国の食料事情や国際問題に左右されるということは、なにかあれば日本国民の食料はあっという間に足りなくなってしまうということだ。例えば、輸入元の国との国際問題が起こって食料の輸入が止まってしまえばたちまち日本は困窮する。輸入元の国からみれば、そういう手段を脅しに使って日本との関係を自国に有利にすることだってできるわけだ。
それって、日本にとっては相当にヤバイのでは…。戦争せずに国を乗っ取られる。ある意味、国を守るのは自衛隊ではなく食糧自給率なのでは。。。
自分たちの食べるものを、自分たちの身近で作る、というのは理にかなっている。「地産地消」という言い方をするけれど、本書によれば「地域で食べる食料は地域でつくる」。東京の食料自給率は1%。神奈川は3%。北海道は195%。すごい偏っている。国内での食料の供給バランスも見直すべき。遠くから運べば、それだけ食材が傷むし、運送中の二酸化炭素の排出量も多くなる。
そしてなるほどなと思ったのは、農作物や畜産物などを生産する地域近郊では、その食材を加工する工場もできるという点。農業、畜産、漁業などの復興は今の雇用問題の解決にも繋がると思ったのだけど、加工工場ができればその地域の雇用も増える。常々、雇用問題も地域の人材は地域で雇用する、という地産地消?がいいと思っていたところなので、その問題も同時に解決するではないかと思った。
日本では、農業従事者があまり尊敬の対象となっていないけれど、実はすごい仕事なのだ。だって、人間が生きていく上で絶対に必要なものを作ってくれているのだから。若者たちが憧れる職業であってもいいはず。海外では農作物を作る人たちはもっと手厚く保護されているらしいし、日本のように大変な割に儲からない、というイメージではないらしい。
食糧自給率の回復で、地方が活性化して、雇用も増えて、国民も豊かになるのではないかと、夢見てしまう。小手先の経済政策ではなくて、もっと日本の国の在り方を根本から見直すべきときなのではないかと思う。
食糧自給率の問題は、単に食糧の問題だけではない、大きな問題をはらんでいる。逆に言えば、これを解決すれば、自然と他の問題も解決してゆくのではないかとすら思う。国を動かす立場にある人たちにぜひ読んでもらいたいと思った。