筆談ホステス 67の愛言葉 (青森一の不良娘が銀座の夜にはぐくんだ魔法の話術)
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本屋の店頭でパラパラと読んでほとんどジャケ買い。障害を抱えながらも銀座の人気ホステスとなった著者の自伝「筆談ホステス」の第二弾。…といっても、私はこの前著を読んでいない。気にはなっていたのでこの機会に注文。しかしこの「〜愛言葉」、その本が届く前に一気に読み終わってしまった。
読みやすいというのもあるんだけど、内容がすとんと心に落ちてくる、いい本だったから。
耳が聞こえないながらも厳しく育てられて、そのあげくにぐれてしまった過去を持つ著者の斉藤里恵さん(これは前著の立ち読みの記憶なので、じっくり読んだらまた違うのかもしれないけど)。そういう、人生の艱難辛苦を乗り越えて、ホステスという天職を見つけた彼女だからこそ言える言葉の数々。ひとつひとつがとても優しくて、そしてなんとも言えない説得力がある。
古今東西の名言に、彼女自身の言葉を織り交ぜて、仕事や家族との関係に疲れた人々の心を癒したり、迷っている背中をちょっと押してあげたり…。身近な人に言われると腑に落ちない言葉も、第三者から言われると素直に聞けたりする。ホステスさんって、そういう存在なのかもしれない。
手書きの文字の数々は普段のやりとりがすっかりデジタルな私にはとても新鮮だった。筆談でも、携帯電話や携帯パソコンなどいくらでも便利な機器があるのだからなにも手書きでなくてもいいと思うのだけど、きっと、手書きだからこそ伝わるものがたくさんあるんだろうなと思った。彼女の字を見ただけで、気遣いと優しさが伝わってくるよう。字に人柄もあらわれてしまうのだ。私ももっと心を込めて字を書かなきゃ。
それと、筆談とメールは違う、という説明にも目からウロコ。確かに、筆談のときには相手が目の前にいるから、文字プラス表情やしぐさといった情報が伝わる。だから声に出す会話と変わらないらしい。筆談とメールのやりとりは健常者の会話とメールの違いと大差ないとのこと。なるほどなぁ。
年齢的には10歳も年下の彼女だけど、とてもそうは思えない。知的で大人な女性という印象。そしてお客様をおもてなしするホステスとしてのプロ意識がとても高い。水商売とはいえ、そこらのキャリアウーマンよりよっぽど「仕事」に誇りを持っているようだ(だから私は一流ホステスさんをとても尊敬するし、憧れる)。
「過去と他人は変えられませんよ。でも、未来と自分は変えられます!」
「隣に誰かがいるだけで、”憂い”は”優しさ”に変わります」
といった彼女自身の言葉から、坂本竜馬、織田信長などの歴史上の人物、松下幸之助、本田宗一郎、マザーテレサなど偉業をなしとげた人々の言葉、そしてマンガやアニメからの引用まで幅広く登場する。この本一冊あれば、そのときそのときの自分に合った言葉が見つかってしまいそうなくらい盛りだくさん。
上司や部下との関係に疲れたサラリーマン、息子とのコミュニケーションが取れないと嘆く仕事人間のお父さん、彼女の本心がわからないという恋する若者、実にさまざまな人たちが、ホステスの里恵さんによって元気づけられ、励まされ、背中をおされているのだった。
悩める仕事人間たちに贈りたい一冊。
筆談ホステス
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