電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
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電子書籍の何が画期的なのか、今後どのように普及してゆくのかが分かり易く書かれていて一読の価値はあると思うのだが、音楽配信との比較で語られる箇所ではちょっと懐疑的になってしまった。
音楽と書籍ではその性質が違う。音楽の場合はセルフプロデュースで、楽曲や動画の配信、ライブ活動などをセットで行えばその楽曲というよりも、ミュージシャンそのものにファンが付く。
が、書籍の場合はそう簡単な話ではないのではないか。
まず本の場合はライブ活動というものがない。動画の配信もない。中身を読むのにある程度の時間がかかる。ファンを獲得するのにも、ある程度、(本を読んだ人による)クチコミも必要。音楽の場合は一曲聴いてもらうのにそれほどの時間は要さないので、多くの人にとりあえず作品を聞いてもらう機会を作れるが、文芸作品の場合はいくら作品がよくても、自分ひとりの頑張りだけではどうにもならない部分も大きそう。音楽と共通する部分も多いのだろうが、比較して語るには違いも大きい気がする。
まぁ、書籍といっても文芸ばかりではなく、絵本や写真集、雑誌、果ては楽譜や料理のレシピなど幅広いので、いくらでもやりようがあるだろうとは思うけど。
現状の本の流通形態の問題点も指摘されており、取次を通さず書店との直取引で本を流通させている出版社、ディスカヴァー21から発行されている点も、興味深い。