本性はナゾのまま◆『中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?』NHK_PR1号

Twitterでの人気者、@NHK_PRさんの本。黎明期からフォローしているアカウントなので、本の中に出てくる数々の出来事や事件もリアルタイムで見ていて、そうそう、あったよねーそんなこと。なるほど、そういうことだったのか。なんて思いつつ楽しんで読めた。

著者は「NHK_PR1号」で、本名も詳しいプロフィールも性別すらも明かされていない。Twitter上で知る以上の情報は書かれていないのだけど、140文字のやりとりだけでは伝わらない、NHK_PRさんの「ほんとうのところ」は伝わって来た。

「NHKという企業をもっと身近に感じてもらいたい」というのが目的で、通り一遍の番宣などはせず、フォロワーと会話して仲良くなる、という明確なコンセプト。それに、「中の人」の個性が加わって、膨大なフォロワーをかかえるアカウントとなった。

実際、この本を読んでることをつぶやいたら、NHK_PRさんからさっそくリプライが届いて、本の中身と現実が見事にリンク。不思議な気分になったのだった。

それにしても、他の企業アカウントと比べても飛び抜けて多いフォロワー数の秘密はいったいなんなのだろう。もちろん、NHKという国民的知名度のある企業だということも一因だけども、その企業のイメージを払拭するようなゆるいツイート、そしてその裏に隠された「ぶれない」コンセプトがフォロワーに「信頼」される要因ではないかと思う。

東日本大震災のあと、日本中がぴりぴりした空気に包まれていたときに、ゆるいアカウントに戻る宣言をして、その後どんなに批判的なリプライをもらおうともその姿勢を貫いたエピソード。震災当日に中学生がNHKの画面をUST中継したURLをクビを覚悟でつぶやいたことも、どれも強い信念が感じられて、確実に、中に「人」がいると思わされた。それも信頼できる人が。

実際にはNHK_PRさんはNHKの代表であり、個人で勝手気ままに好きなことをつぶやいているわけじゃないのだけど、あたかも自由につぶやいているかのようなツイートができるところが、NHK_PRさん(の中の人)の魅力。

今ではNHK_PR2号さんなんかもいるわけだけど、企業のアカウントとして、中の人が複数になったり、交代したときにどうなっていくのか、今後も気になるところ。

タイトルの「中の人などいない」にはいろんな意味が含まれていると思うけれど(本書の中でも説明されているけど)、NHK_PRというのは実在のひとりの人間がやっているのではなくて、作られたフィクションの人格、それもNHKという企業をキャラクター化したようなアカウント、という意味も含まれているのだろうな。