織田信長の妹、お市の方の三人の娘の末っ子、おごうの生涯をその侍女の目線から描いた作品。
大河ドラマ「江(ごう)」では明瞭快活な姫として描かれていた江姫だけど、この小説ではぼんやりとして、しつかみ所のない姫として描かれている。
これだけ波瀾万丈の生涯を送りながら、主役として描かれることはあまりないキャラクター。脇役としては様々なドラマに登場しているけれど、その作品によって性格はかなり違うように思う。
父(浅井長政)も母(お市の方)も母の再婚相手(柴田勝家)も戦によって命を失い、姉(茶々、淀君)は豊臣秀吉の側室となり、おごう自身は三度の結婚を経て八人の子を産生む。長男の乳母である春日局との確執もよくドラマになっている。
この小説では語り部が本人ではなくて創作のサイドストーリーも入っているので、あまりおごう本人の物語という感じがしない。自分から運命を開くわけでも、翻弄される身を嘆くわけでもなく、ただただ流されてゆくような女性で、読んでいてもすっきりとはしない。こういう生き方もあるのだろうとは思うのだけど、それを踏まえて、もう少し魅力的に描いてもよかったんじゃないかとも思う。
史実から見れば、悲劇的な死を遂げた母親や姉の淀君、戦で夫を失ったもう一人の姉のお初よりも恵まれた生涯だったのかもしれない。しかし、自ら何かを成し遂げたという印象は薄くて、やはり物語の主人公にはなりにくそうだ。