ちょっと怖い物語の詰まった短編集。萩原浩さんの作品は、怖いけれどおかしい。当事者が真剣であればあるほど、周りから見ると滑稽だったりする、あの感じ。
表題作の「押入れのちよ」。幽霊なのにかわいらしくて憎めない。そしてちょっとほっこりしながら読み進めてみると、実は悲しい過去を背負った幽霊だったりする。どれも面白いけれど、この作品が一番好きかな。「お母さまのロシアのスープ」もかわいらしい双子の女の子が出てくる。途中でその正体は想像がついてしまったのだけど、それでも結末はとてもせつない気持ちになった。
幽霊が出てこない話もあるのだけど、なぜかそういう話のほうが、怖い。生きている人間が一番怖い。