ほっこりとタイムトラベル◆『たんぽぽ娘』ロバート・F・ヤング

SF小説の古典的な作品なのかな。表題作の「たんぽぽ娘」を読むために購入。きっかけは演劇集団キャラメルボックスの舞台「ミス・ダンデライオン」。その原案だというので。

読んでみたら、「ミス・ダンデライオン」よりも、映画でもヒットした、市川拓司さんの小説「いま、会いにゆきます」のほうが断然似ている…。というか、完全に元ネタなのではないかと。しかし、私の場合は先に「いま、〜」を読んでしまっていたので、どうしても、「たんぽぽ娘」のほうがマネっこのように思えて仕方ない。まぁ、それだけ「いま、〜」がよくできていたということだとも言えるのだけど。

正直、どの作品もそれぞれ独立してとても好き。タイムトラベルという時間のずれを利用したファンタジーで、男女の淡い思いを描いていて、最後にちょっぴり切なく、そしてほっこりと暖かくなるのだった。

タイムトラベルの仕組みを利用したストーリーの巧みさとともに、最後のほっこり感をちゃんと保っているところが、後発の2作品のいいところだなぁと思う。探せば他にも同じトリックを使った作品はたくさんありそう。

この短編集の他の作品もいいものがたくさんあったけれど、それと比べても「たんぽぽ娘」が人気あるのはよく分かる。ちょっぴりロリコン的な要素もあり、男性の心を掴むのかもしれないなぁ。

他の作品では、女性が強い世界が多いのが印象的だった。それも、凛とした成熟したものというよりは、野性的で動物的に進化した感じで、男性を支配するというもの。これは作者の、支配されたいという願望なのか、どうなのか。

そんなわけで、ロバート・F・ヤングの他の作品も読んでみたいとはあまり思わなかったのだけど(短編13編でお腹いっぱい)、「たんぽぽ娘」が名作だということは確認したのだった。うん。

(電子書籍で読了)