インシテミル (文春文庫)
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映画化されたそうで、原作本として書店に平積みされてるのを見て買ってみた。ここのところ、小説(それもミステリーっぽいもの)をほとんど読んでいなかったせいか、かなり楽しめた。
アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」を彷彿とさせる設定。こういう「閉ざされた空間」というミステリー小説の設定を「クローズドサークル」というんだそうだ。後半で明かされる、主人公の意外な特性。過去の著名なミステリー小説から引用される不気味なメッセージ。解けない謎。
高額の報酬につられて集まった12人が、「主人」の思惑に翻弄されながら疑心暗鬼になり殺人ゲームにまきこまれてゆく。最初は、12人という登場人物の多さに「うわっ」と思ったのだけど、なるほど、一人また一人と殺されて、登場人物たちはどんどん減っていく。いったい誰がこんなことを思いつき、これだけの人数を集めたのか。生き残るのは誰なのか。報酬はきちんと支払われるのか。
ついつい引き込まれて夜更かしして読み切ってしまったのだった。映画も見てみたいもんだ。
しかし、「そして誰もいなくなった」のほうが、設定がシンプルできちんと犯人と動機が明かされる。「インシテミル」はルールが複雑だし、結局最後までわからない謎もある。そこが味噌でもあるんだろうけど。「そして誰もいなくなった」はシンプルで効果的なストーリーとトリックで鮮やかに終盤を迎える。それが名作たる所以だろうな。「インシテミル」は他にもさまざまな作品の要素を内包しているようなので、一概にアガサ・クリスティとだけ比べるのもなんだけど、ほかにあんまりミステリーを読んでないのでつい比べてしまった。
そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
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