映画的なサスペンス小説◆『その女アレックス』ピエール・ルメートル

書店でずっと平積みになっていたので気になって読んでみた。

被害者だと思われた女が実は…という展開でどんなどんでん返しがあるのかと期待満々で読んだせいか、結末にもそれほど驚くこともなく、うん、そうきたか、っていう感じで読了。

シリーズとしては二作目のようで、日本ではこちらが先に翻訳出版されて、一作目が後から出版されているみたい(現在、三作目まで出版されている)。ストーリーは別個だし二作目から読んでもまったく問題なかったけれど、事件を追う刑事の過去についてちょこちょこと言及されているのがちょっと気になった。

シリーズの他の作品も読んでみたいと思うけれど、いかんせん、なんとなく暗くて、読んですっきりするタイプの作品ではない感じ。それで二の足を踏んでいる。読むなら早めに読まないと設定忘れそう。

主人公ヴェルーヴェン警部については一作目で人となりとその心の傷について描かれたと思うので、本作ではあまり深くは描かれず、焦点は「アレックス」という女に当たっている。「アレックス」の行動を追いながら、その過去と目的をひもといていく。冒頭で拉致され、監禁される「アレックス」。そして救出に向かった警察官たちがその場所に辿り着いたときには忽然と姿を消してしまった。その後に起こる異様な連続殺人。

とても映像的。映画的。ドラマ的。作者のピエール・ルメートルがもともとはドラマの脚本家だったそうで、ひどく納得。連続殺人が起こる場所も転々としていて、映像の場面転換としても効果的。映画になることを見越したような作品だなと思った。

(電子書籍で読了)