ディープな戦い◆『ストーカーとの七〇〇日戦争』内澤 旬子

だいぶ前に読了してたのだけど、ここに書くのが遅くなってしまった。読み終わった直後の感想じゃないのでちょっと熟成されてしまってるかも。

今現在、ご自身や身近な方がストーカー被害に遭っている方も、これから遭いそうな方も、まったくそんな心配はないよっていう方でも、読んでおいて損はないであろう1冊。

著者はイラストレーターで文筆家。以前からエッセイや挿画を担当された本を読んでいたので馴染みがあったこともあり、実体験エッセイのような気持ちで読み始めたのだけど、想像以上にディープな世界だった。そして想像以上に被害が深刻で、解決までにかなりこじれてて、これ、本にして大丈夫なのかなと思うところも多々。

しかし、(まだ読んでないけど)癌の闘病やら家畜を自らの手で育てて屠畜して食べるとか、かなり常人離れした生活をしてそれを文章に書くというお仕事をされている方なので、このネタを書かずにおれるかという意気込みも感じたのだった。そういう勢いのあるところが好きなのだけど、ことストーカーへの対応に関しては、「いやいや…それはちょっと…」と思う部分もありつつ、いや、だからこその内澤旬子、と思う部分もあり。

作家さんのストーカー被害ということで、ファンの方がこじらせてしつこくつきまとうような被害を想像して読み始めたのだけど、実は恋愛関係のもつれが発端で、十分に一般の方々にも当てはまるような体験談が綴られている。自分自身に当てはめれば、ストーカー化した相手に、第三者を挟まずに直接連絡するとかあり得ないのだけど、それをやってしまうし、しかもそれの何が問題かをあまり理解してなさそうなところもあって、ストーカー被害をこじらせてしまう被害者側の気持ちのようなものもなんとなくわかった。

いや、理解はできないのだけど、そういう人もいるのか、と勉強になった。ストーカーとは違うのだけど、ネット上でのいざこざでも、どうしてそこで(問題をこじらせるような)そういう行動を取るかな…という方がいて、ナゾだったのだけど、彼らの中では自然な思考回路なのだな。

とはいえ、この本の中で著者が体験した警察や司法関係者などとのやりとりは、実際に被害に遭っている方にはとても参考になるのではないかと思う。やりとりの中で、警察、検察の思惑や逮捕までの労力も垣間見えて、被害者救済が簡単ではないことがよくわかる。

(電子書籍で読了)